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自然由来のパームオイルは なんとなく健康的なイメージがある。
でも そのオイルが出来るまでの過程を見ると、そうも言ってられないかも。
パームオイルそのものはともかく、それが生産される過程では、非常に多くの環境面と社会面での問題があると、NGOなどが指摘しているのです。
パームオイルは現在マレーシアやインドネシアなど主に東南アジアで栽培されていますが、もともとは西アフリカ原産の植物。オイルパームの実は収穫後すぐに搾油する必要があるので、プランテーションのすぐ近くに搾油工場が必要。この搾油工場がペイするためには、最低でも3000ha、工場の規模によっては1万ha以上のまとまった面積のプランテーションが必要らしい。
つまり、オイルパームの商業的プランテーションのためには、最低でも5km x
5kmぐらいの大きさ、場合によっては10km x 10kmの広大な面積が必要になると。実際マレーシアなどでは高速道路の両脇に、延々と数十キロにわたって続くオイルパームのプランテーションを見る事が出来るらしい。
さぁ問題です。そんな大規模なプランテーション開発には何が必要でしょう。
はい正解。森林を切り拓かなければいけません。その結果、野生動物は住み処をなくし、また、森林の持つ多様な機能は失われます。いくら緑に見えても、単一種のプランテーションは、天然の森とは質も機能もまったく異なる訳で、つまり、熱帯林を大規模に破壊し、生物多様性も減少させることが、パームオイル・プランテーションの大きな問題と言えそう。
また森がプランテーションに開発されると、熱帯のもともと少ない表土(赤土)が流失したり、そのために水質が悪くなったり、もちろん地下水路の枯渇も考えられ、また農園の管理に大量に使われる殺虫剤、除草剤、化学肥料は周囲の環境を汚染する事は容易に想像できるでしょう。これは野生生物に悪影響を与えるだけではなく、農園で働く人の健康被害をももたらしています。
社会的な影響はどうだろう。例えばボルネオ島の北部にあるサバ州、サラワク州では、もともと森は先住民族が住んだり、使ったりした訳で、彼らの間では、自分たちの部族が使う範囲は明確に意識されていたのですが、プランテーションを開発する企業は、その事を無視して開発を進めた経緯がある。その結果、土地の権利をめぐって、サバ、サラワクの各地で、紛争が起きています。企業や警察等による先住民への嫌がらせが行われたり、逆に一部では、怒った先住民が企業の送り込んだ労働者を殺してしまったりという痛ましい事件も発生しています。
土地を奪われることは、生活の場が失われるだけではありません。先住民にとって森は、生活の場であると同時に、独自の文化を継承するための場所です。住む場所だけでなく、生活スタイル、文化まで変えざるを得なかった先住民も多く存在します。
さて、そのプランテーションを運営する為に必要な、農園の労働者はどうでしょう。先に述べたように労働上の安全衛生がきちんと管理されていないことが多いのはもちろん、適切な給料が払われなかったり、人権を侵害するような事件も多く発生しています。最近はコストを低くするために外国人労働者が使われることが多く、ひどい場合は組織的な不法入国だったりします。そうした弱い立場にある労働者は強制労働をさせられたり、給料が支払われなかったり、様々な労働問題が存在することが指摘されています。また、少数ながら存在する小規模自作農の場合にも、せっかく作った果実を、搾油工場や業者から安く買い叩かれることもあると聞きます。
こんな感じで、パームオイルを生産する過程では、さまざまな環境面、社会面の問題が発生しています。たとえ私たち家の近くの環境は改善されても、それ以上に熱帯の環境は傷つけられ、厳しい生活を強いられている労働者がいるのです。
私たちが安く植物性油脂を大量に使うことができる影には、実はこのような犠牲があると言えます。人の犠牲の上に種族が繁栄するなんて、ヒトラー的考えの人は居ないでしょ。どうも残念ながら、パームオイルの需要が延びることは、その生産地の環境と人々をどんどん痛めつけているようです。
もちろんこのように環境負荷が高く、また人権を著しく侵害するようなプランテーション経営は、持続可能なハズがありません。ただしNGOなどからの厳しい批判を受け、いくつかの企業は、プランテーション経営の方法を改善すべく、様々な新しい取り組みを始めている様です。
パームオイルは環境に優しい。貴方はそう言いきれますか。
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