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地中熱の活用

04年1月

  井戸水は『夏冷たくて・冬温かい』なんて聞いた事ありますよね。

これって、ホントでもありウソでもあるんです。実は地下数メートルでは地上と比べ、一年を通して殆ど温度の変化が無いのです。

この性質を水が熱交換して、気温が高い夏には冷たく 、気温の低い冬には温かく感じるのです。土が断熱材と蓄熱材を兼ねていてくれるんですね。

   
データは、旭川気象台データ『気温と地中内部の温度の差』です。
   地下1Mと比べ5Mでは気温と関係なく、ほぼ一定の推移である事が読みとれます

そこで
その事を実証すべく、95年から97年まで自宅の裏に深さ5Mのパイプを打設し、5M下・3M下・気温と3カ所の測定をしてみました。

それは右図と酷似した結果が出ましたが、夏の気温35℃を越える日でも地下5Mは17℃。

冬の氷点下でも地下は15℃前後と、平均して地中5Mでは、15〜18℃と安定した土中温度が見られました。

思った通りの実測値で、まさに
正解なんとかその温度差を、居住空間に活かせない かと試行錯誤を繰り返してみました。

その頃目にした技術にドイツやスウェーデンで、エコ技術として注目されている方法にクールチューブと言う方法がありました。クールチューブとは、熱交換型換気システムへの新鮮空気導入を、地中に埋めたチューブから摂ると言う考え方で、まさに地熱利用と感銘を受け、早速自宅北側より地下1メートル程度の深さでパイプを埋め、室内に直接外気を引き込んでみました。

チューブ内に結露した湿度は、途中にスポットを付け、そこに水中ポンプを設置して回収すれば良い。あとは工事費を、どう落とすかと言う事だけだと思っていた。

そして結果は 確かに夏は、外気より低温の空気が供給され、成功したかに思えたのですが、残念ながら、供給される空気は湿度を含んだ重いモノであり、チューブ内の結露の事を考え、あえて地中深く埋めず、距離で熱交換を稼ごうとした 結果、殆ど湿度の除去は行われず、正直快適とは言い難い結果であった事を付け加えておきます。


=地熱回収概念図ツーバイシックスの場合=
1階床下も室内と想定し、基礎断熱とコンクリートの蓄熱で、夏は冷気・冬は暖気を熱として蓄える。但し薬剤に頼らない白蟻対策が必要。
 

基礎内の温度
それでも、確かに夏の暑い日でも基礎内は確かに涼しい。

敷地の関係で、半地下に物置を創ったお宅なんかでは、冬も結構な温度があるとの事。一度計ってみようと、お客様の家の基礎内に幾つか温度計を置かせて頂き、年間を通して測定させて頂きました。

すると思った通り。
基礎断熱したお客様邸の基礎内が、冬氷点下にならないのは容易に想像できたが、基礎断熱を行っていない(床断熱)お宅でも、冬季氷点下になっていなかったのである。これは、一階の床面積にもよる けど、大方は同じ結果だったのだ。

これを使わない手は無い。チューブを埋める費用や、手間を無くし、もっともリーズナブルに、この今まで断熱ロスと思われていた空気が、実は一番外気に左右されない空気だったと言えます。

方法論
では、その温度を如何に回収しよう?換気システムのRA(排気回収)をそのまま基礎内で行う事は容易だが、生活臭やホコリ等が、基礎内に溜まってしまわないか?もちろん、御施主様に定期的な掃除をお願いすれば、事は足りる。基礎内の立ち上げを高くし、腰を屈めて作業できる位の高さを提供すれば、年に数回の掃除くらいは・・・やはりそれは頂けない。

その後、試験的に第一種熱交換式の換気システムダクトへの外気からの新鮮空気OA(給気)を基礎内から摂る事にしました。

基礎内への吸気はクールチューブ・又は全 周に渡る『基礎パッキン』から。これにより強制的な換気で、土台の腐食と基礎内の滞湿は確実に減らす事が出来ます。基礎内に設置した湿度計が物語りました。

そして確実に、冬季の吸気温度は上がったのです。副産物として、夏期の吸気温度も下げる効果もあり、これは常に外気にさらされた基礎温度よりも、地中熱の改修が勝った結果と言えます。


良好な環境の基礎内は、新鮮空気の通り道と共に、大きな蓄熱体とする事が可能です。

さらに
その効果を高める為、床下断熱を辞め、基礎内の温度=床温度に近づける様、基礎外部に断熱をし、土台〜基礎の確実な気密を高める事により、より顕著な結果は得られます。

そして、基礎内に暖房機を設置し、換気OA(給気)を基礎内に出して、計算から微妙に室内より高い圧力にする事により埃や臭気を基礎内に停滞させる事を押さえ、快適な暖房が得られます。

コンクリートが蓄熱する事により、暖房機に熱が無い状態でも、長く室温を保っておく事が可能となり、もちろん夏期は、外気温より確実に低い地中熱回収による冷気を感じることが出来ます。


参考までに 以前お引き渡しした邸宅の初期計画案です。
夏の日射を考慮し、バルコニーと屋根で庇を創り
冬の日射を取得出来る様計算したデザインです。

 

注意点として

基礎の外側に土と接して断熱材を施工する事により、白蟻の被害を想定しなくてはいけません。

その為に環境汚染が考えられる薬剤を使ったり、定期的な薬剤散布では本末転倒。

もちろん、室内側となる土台や根太等への防蟻材の散布などは有り得ません。

また、基礎内に停滞した空気を造らない為、入念な基礎計画が必要。もちろん耐震にも関わってきます。また室内側のプランニングにおいても同様な見解が必要となります。

壁や天井の断熱においても基礎内同様、蓄熱も目的とし、最低でも住公の次世代断熱基準の見なし仕様を上回る性能が欲しい。

そこまで
の断熱性能があれば、年間暖房灯油消費量の削減はもちろん、木製窓など開口部の断熱も強化されることで、窓からのヒンヤリ感も解消される 他、低温暖房によって火照りや空気の乾燥感が緩和され、暮らしやすさは大幅にアップするから

ただし、断熱は厚ければ良いと言う考えでは無く、コスト負担も大きくなって来るので、むやみに『無暖房』を目指すモノでは無く(無暖房については又後日)動力を使わないパッシブソーラーや、ヒートポンプなども考慮に入れた方が良いかと思われます。

断熱性能を高めるには、その分だけコストアップにもつながってきますが、目に見えない断熱部分は内外装や設備機器とは異なり、建てた後から手を加えるのは難しく、新築時のコストアップ分を上回る予算が必要になってくる。

それを考えれば、限られた予算の中で断熱性能の高い住まいを造るために、最初にお金をかけておく部分と、後からでもお金をかけられる部分を、適切なコスト配分を行った設計を提案する事も、我々ビルダーの腕の見せ所となるのでしょう。

いずれは、地熱回収による冷暖房費の削減費用を数字で表してみたいと考えます。
 

 


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