雪と仲良く暮らそう

積雪の多い飛騨では、雪と人々の生活は切っても切れないものです。特に戸建住宅では、玄関・車庫の前、アプローチ部分などの除排雪の負担が大きく、またすがもりや落雪などによる障害もあります。このような除排雪の苦労や雪の障害があるため、私達は雪を嫌い、敵視しがちです。しかし、雪処理の基本的な事項をおさえて計画することより、除雪が軽減されトラブルのない住まいをつくることができます。また、私達みんなで雪処理に取り組んでゆくことにより、さらに快適なまちをつくることができます。それにより今まで邪魔物としてきた雪も、自然の恵みとして楽しめるようになることでしょう。


 住宅の雪処理計画

住宅を計画する際に、雪処理に関して考慮しなければならないのは、雪処理の負担をできるだけ少なくすることと、建物や人・近隣へのトラブルを防止することです。

その為の方法は、アプローチの計画、隣地境界、堆雪空間など「建物の配置計画」による方法、雁木やピロティ・高床工法など「建築的な処理」による方法、融雪機など「建築設備の利用」による方法、さらに、近隣や地域的な雪処理を効率的に進めるために「雪処理体制の充実」による方法があります。

ここでは、そんな事 ちょっとだけ考察してみませぅ。


 アプローチの集約

私達が普段よく利用する敷地内の動線は、道路・玄関・車庫・物置をつなぐ部分です。敷地内に車庫や物置が点在していると、除雪を必要とする面積が広くなります。そこで、冬期間の雪処理の負担を軽減するためには、これらの動線をなるべく短く、また集約させることが有効です。

動線を集約し短くする方法には、例えば玄関と車庫を近付け、アプローチを共有したり、車庫や物置を建物に組み込むことなどがあげられます。

建物を道路に近付けてアプローチを短くする方法がありますが、その場合には、道路や車庫・アプローチ周りの堆雪空間が不足しないよう、また道路からの圧迫感など景観上の問題をまぬかないよう、十分な配慮が必要です。


 アプローチの建築的処理

日常、除雪が必要となるアプローチ部分に雪が積もらないように、建築的に工夫する方法があります。例えば玄関から道路までのアプローチ部分にキャノピーを設けて、駐車スペースを兼ねる方法や、車庫の側面などを利用し、アプローチ部分を雁木で覆う方法が上げられます。両者とも、除雪を必要とする部分は、道路から雁木やキャノピーまでの部分だけですむことになります。

 堆雪空間の確保

敷地内の雪は各自の敷地内で処理することが住宅を計画する上での原則です。

まず、建物まわりの落雪空間や建物の後退距離については、落雪屋根の建物では、屋根面積・勾配・軒の高さによる屋根雪の飛距離と落雪量を考慮しなければなりません。

次に、玄関や車庫まわり・アプローチなど日常生活の動線となる部分と、道路から排雪された雪についても考慮し、アプローチ周辺と建物前面の堆雪空間を確保します。特に北側に道路のある敷地の南面を広くとることから、建物が道路側に接近し、建物前面の堆雪空間が不足しがちですので注意が必要です。

屋根雪の処理や堆雪空間を有効に利用するために、スノーピットを設置する方法があります。スノーピットは屋根雪の落雪部分やその他の堆雪スペースを浅く掘り下げてつくります。
それらはリモデルでも解決出来る事も多い事は確かです。


 落雪障害の防止

玄関や車庫の前、アプローチなど、人の通行部分には落雪させないような安全な計画が必要です。そのためには、屋根の型や勾配の向きがポイントとなります。

屋根には、落雪屋根と無落雪屋根があります。敷地に余裕があれば、敷地内に落雪させることが望まれます。落雪屋根の屋根形態はできるだけ単純にし、雪が滑り落ちやすいようにします。雪止め金具や防雪柵は、スガモリなどのトラブルを避けるためにも、できるだけ使用しないよう計画するべきです。無落雪屋根の場合には、構造的な配慮を十分するようにして下さい。

雪の多い地域では、窓が雪で埋もれないように、高床工法にしている建物をよく見かけます。また、その他の地域でも、敷地の有効利用のために高床とし、床下部分を車庫や物置に利用する例も多くあります。このように高床工法にする場合には、隣地への日照や周辺との高さの調和なども検討したいものです。

窓への雪害防止には、可動式の柵等でも対処が可能です。


 省融雪システム

敷地内の雪は配置計画や建築的な方法で処理することが原則です。しかし、高齢者世帯など除雪する事が困難な場合や、敷地面積が小さく、堆雪空間が不足する場合には、消融雪システムを利用する方法があります。

敷地内で処理しきれない雪は、融雪機を使用して融かします。融雪機には地中埋設型の融雪槽と移動式のものがあります。地中埋設型は場所をとらず、使いやすさ、効率などの点で優れていますが、反面工事費が高くなります。

また、アプローチの歩行部分や車路の部分の消融雪にはロードヒーティングをします。ロードヒーティングには、熱源として灯油・電気・ガス・地下水を利用したタイプのものがあり、工事費・保守点検・維持管理など考慮して設置を検討します。また、ロードヒーティングの境界部分が凍結しやすいので、融雪水の排水に注意しなくてはいけません。


 雪処理とまちづくり

雪処理の負担を少なく、より快適に行うためには、ハード面での雪処理技術の向上とともにソフト面での充実が必要です。

例えば、建物と隣地境界の間のスペースは、一般に中途半端な空間になり利用価値が低いのですが、隣家同士で互いに話合いをして、隣家のスペースと合わせて共同利用を図ります。冬は両家の堆雪空間として、夏は野菜畑やバーベキューコーナーとすることで、敷地の有効利用も可能となるでしょう。

また、地域の除雪には、町会内や自治会などによる除雪体制づくりをすすめ、一斉除雪を行うことやボランティアによる老人世帯への除雪支援などを行い、地域コミュニティを深め、私たちみんなで、雪処理に取り組んでいきたいモノです。
 


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