画像は杉の積層材。
無垢の動き方向が逆に積層されている事が解ります。
この材料は、繊維方向にひき板を平行に積層接着したモノで木構造の耐力部材として柱や、梁などに用いられます。その特性から、湾曲アーチや大スパンなどの耐力的意匠も可能になりました。
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この集成材がどーのこーのってのは大手住宅メーカーVS工務店的言い争いの様な気もしないでもありませんが
・・(^-^;
で 一応大まかに説明でも。
よく言われる宣伝文句に『集成材はくるわない』ってのがあります。
集成材は原料となる「木材」をいったんラミナ(挽き材)にして、それを乾燥した上で、大きな節などの欠点を取り除き、積層接着したモノを言います。
<木造金具軸組参照です>
ブラウザの戻る←で戻って来てね(笑
イコールごく薄い接着層を除くと 集成材の体積の大部分は無垢の「木材」
したがって木材が持っている水分を吸放湿する能力は、そのまま受け継がれています。
言葉を換えれば吸放湿によって集成材も当然伸び縮みします。
つまり狂うのです。
ただ 管理された乾燥がなされるのと、接着層が変形を阻止しようとするので、無垢の生材のように大きく狂わないだけです。
「集成材はくるわない」というのは大嘘で、「集成材はくるいにくい」というのが正解なのです。
集成材(積層材)は無垢材の様に割れない
背割りしなくても割れないから強い?これも「集成材はくるわない」と同じく、誇大広告的な表現以外の何物でもありません。まったく、なんJAROね(笑
背割りをしなかった木材。
こいつはちょっと凄いですが、こんな感じで放射線状に割れが入ります。これ位なら、断面計算上は殆ど関係ありませんが、極端な割れは無いに越した事なないですな。 |
「集成材は割れにくい」というのが正解でしょう。背割りも芯が無ければ必要ありませんしね。
集成材でもエアコンの風が直接当たったりすると、材木の含水率が極端に下がりすぎて、収縮が大きくなり クラックが入ったりします。
もちろん冬季の過乾燥でも同じ事が言えます。
耐水性の高い接着剤を使った構造用集成材であっても、屋外の雨ざらし状態で使ったりすると、膨潤と収縮の繰り返しで、クラックが入る事は容易に想像できます。
接着不良の製品で接着層が次々にはがれてくるようなら、まさに瑕疵でしょうが、 まぁ多少クラックが入ったところで、断面強度算定の強度的
(計算上は)には全く問題無いので 特に気にする事は無いのです。
一般的な背割りの図
芯まで割ってありますね。これで無造作に出来る小割れを、この割れに凝縮するのです。 |
ちなみに木材の割れと言うのは木材の収縮のひずみから来ます。
単純な例で言うと生木が乾燥して表面が収縮しても内部までは乾燥していなければ、内部は収縮しませんから木材の表面は割れにより帳尻を合わそうとします。
これはすべて国産の桧なり杉などの真ん中に芯を持った柱のことですが、この芯持ちの材の場合は必ず割れます。
「じっくり乾燥させたら全体に収縮して割れ無いんじゃない?」と一般の方は率直な疑問をお持ちになろうかと思いますが、残念ながらこれが特性で
、しかも自分を守る為にも、必ず割れるのです。
理由は簡単。「木材の柾目(木の半径方向)は一般的に2%ぐらい乾燥収縮しますが、板目(木材の接線方向)はその2倍の4%ぐらい乾燥収縮するからです」そこに木材の持つ吸放出機能が発揮されると、もっと歴然ですね。
ただ 上の写真みたいなヒビ割れの柱が、和室に立ってたら可笑しいですよね(笑)って訳で、あえて先に割ってそこに動きを集中させるのが、背割りって方法なのです。
集成材は無垢より強い?
強い・弱いと一概に言っても何に対して?とか、どういう意味での「強い・弱い」の定義をハッキリしていないと議論が成り立たないざますわよね。
ここでは強度の事だけ書いてみます。
集成材といってもいろいろな種類があります。
大きく分けると 造作用と構造用に分かれます。造作用は 家具・建具・造作に使われるもので美観が一番重要です。強度は問題にされません。接着剤も造作材の場合は耐水性の低い(値段が安い)ユリア系が主に使われます。
つまり 一口に集成材といっても造作用集成材には「強いも弱いもない」と言えます。
昔よく見かけたのが、どう見てもユリア系の接着材を使った、合板が外部に使われてて、案の定めくれて来てたりする仕上げ(笑)あんなん見て、合板は弱いとかって信じてる本職さんも居ますが、そーゆーのは、基本的に使い方を知らないだけ。恥ずべき事です。
そう言えば実は・・JAS(日本農林規格)でも強度の規定はありません。接着がきちんとなされているかどうかが規定されているだけですなんです。
一方、構造用集成材は、柱や梁に使われるのもので、強度が一番重要です。
接着剤もレゾルシノールとか水性高分子イソシアネートといった安定した強力なものが使われます。
一昔前なら建築基準法で「無垢の製材」の強度が、低く規定されていたので、「構造用集成材の方が同じ樹種なら1.5倍も強度が高い」なんてことが宣伝文句として使えました。けどホント一昔前の話です。
現在では 製材の品質管理手法も進化して、きちんと含水率と強度が管理された製材品であれば、高い強度が認められるようになっているのです。
したがって 一概に「集成材の方が50%以上も強い」なんて事は言えなくなりました。
もし、集成材は無垢の柱に比べて1.5倍の強度があります!なんて公言するヒトに会ったら、『何に対して1.5倍ですか?』って素直に聞いてみてください。そして、不勉強なヒトだわっふふふん♪くらい思っても、誰も責めませんから(笑
めんどくさーい表現をするなら 正解は『構造用集成材のJAS製品であれば、品質管理のされていない同樹種の製材品に比べて、建築法規上 高い基準強度が認められている』と言う事になるのでしょう。
集成材は弱いって本当ですか
良く聞く「集成材は弱い」は、腐朽菌やシロアリに対する抵抗力についてと言えます。
前にも挙げた通り、集成材の体積の大部分は、無垢の「木材」ですから、集成材が持っている抵抗力は素材のそれと基本的に変わりません。
素材に対抗性があれば強いし、逆に無ければ弱い。樹種しだいって事ですね。
もちろん使われ方が一番の要因となりますが。
挽き板(ラミナ)の乾燥の時に 抗菌性をもつ化学成分が、多少分解・揮散することもあるでしょうが、それは一般的な製材でも同じです。
ラミナは乾燥しやすいので 120℃くらいの高温で乾燥された芯持ち材などに比べて むしろ分解・揮散する成分が、少ないと思われます。
集成材の腐朽菌やシロアリに対する抵抗力は、素材と変わらないというのが正解でしょう。
もちろん 防腐処理などを施した場合には話は変わりますがNE。
そんなこんなで集成材論争(笑
何がダメで、何が良いってのは一概に言えないのですね。
『適材適所』 これが一番の正解なのだと思います。
そして、その様々な特性を知り、適材適所に使いこなす知識が必要なんですね(^-^;
参考にさせて頂いたWeb:「樹と木と建築よもやま話」
http://kitokito.at.webry.info/theme/b4c2d971e1.html
※連絡先が解りませんでした。リンク不可でしたら、御一報頂ければ幸いです
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